『宮沢賢治全集8ーシグナルとシグナレスー』を読んだ感想

読んだ本紹介

こんにちは。甘味です。

近代文学で思い浮かべる作家は誰でしょうか?

夏目漱石や芥川龍之介など、教科書で読んだことのある作家がたくさんあがります。

でも正直、難しくて読みにくい作品が多いんですよね……

その中でも比較的読みやすいと感じる作家に宮澤賢治がいます。

有名な作品では「注文の多い料理店」や「銀河鉄道の夜」などですね。

本日は、私の好きな短編童話『シグナルとシグナレス』を紹介します。

この作品は、鉄道の信号機同士の恋を描いた作品です。

あなたにおすすめ

・宮沢賢治作品に挑戦してみたい方

・文豪作品に挫折してしまった経験がある方

・信号機の恋?気になる方

本の紹介

『宮沢賢治全集 8』

注文の多い料理店 オツベルと象 グスコーブドリの伝記 ほか

宮沢賢治 著

ちくま文庫

689ページ(文庫本)

1,000円(税別)

あらすじ

東北本線の信号機であるシグナルと、軽便鉄道の小さな腕木式信号機シグナレス。

身分の違いからお互いの気持ちがすれ違ったり、周りに邪魔されたりしながらも互いの愛情を深めていきます。

信号機であるふたりはその場所から移動できませんが、ふたりで遠い星へ行こうと想いを馳せるのです。

ハイライト

『だから僕を愛して下さい。さあ僕を愛するって云って下さい。』

本文より引用

シグナルがシグナレスに愛の告白をするシーンです。

当時の日本文学ではこの「愛する」という表現に前例がなかったそうです。

文豪の有名なエピソードとして、”I love you.”を「月が綺麗ですね」と夏目漱石が訳したというものがあります。

だからこそ、混じり気のないこの「愛して下さい」というシグナルの言葉は、まっすぐな愛が表現されているように感じました。

『けれどあすこには汽車はないんですねえ、そんなら僕畑をつくらうか。何か働かないといけないんだから。』

『えゝ。』

本文より引用

ふたりがこの場所を離れて遠くへ行こうと話しているシーンです。

信号機であるふたりは汽車がないところでは仕事がありません。

せっかく夢物語の話をしているのに、仕事がなくなってしまう心配をして畑でも始めようか、というシグナルたちが、実に人間味あふれていてとてもいとおしく感じた一節です。

彼らは「人」ではありませんが、宮沢賢治によって命を吹き込まれたキャラクターなのです。

人と同じように悩み、思いを伝えあうふたりの恋路を応援したくなります。

これが宮沢賢治作品の魅力ですね。

この本を読み終わって

今回は宮沢賢治全集の中からお気に入りの作品を紹介させていただきました。

大学生の頃に文学の課題図書で出会った作品ですが、いまだに心に残っています。

この全集には物語を知っている人も多いであろう「注文の多い料理店」が入っていますので、宮沢賢治作品の入門として手にとりやすいかと思います。

なんとなく読書好きなら近代文学を読むのは当たりまえ。みたいな風潮がありますが、読書を楽しめれば自分の好きなように読めばいいんじゃないかな~と日頃感じています。

それでも長く人の手に渡ってきた作品が素晴らしいことには違いありません。

教科書のように読まされるのではなく、読みたいと思った時にぜひチャレンジしてみてください。

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