こんにちは。甘味です。
本日ご紹介するのは、私が高校生の頃であった一冊です。
青いキャデラックに乗って一緒に旅したような気分になれるさわやかな小説です。
あなたにおすすめ
・夏らしい軽やかな小説が読みたい方
・今頑張っていることに迷いを感じている方
・ドライブが好きな方
本の紹介
『空色ヒッチハイカー』
橋本紡 著
345ページ
定価514円(税別)
あらすじ
誰もが憧れる秀才の兄がある日突然いなくなってしまいます。
その背中を追っていた弟、彰二は夏休みの夏期講習を放り出して、兄が残したキャデラックに乗って遠い場所へ旅を始めます。
旅のお供はヒッチハイカー。そうこなくちゃ!
道中、様々なヒッチハイカーを拾いながら、
助手席に乗せた杏子とともに西へ向かう7日間のドライブ物語。
ハイライト
「さっき話したことはね、ほとんど全部、前につき合ってた彼氏の受け売りなの。理屈とか議論とかが好きで、いつも私に考えていることを話すわけ。彼のことが好きだったから素直に聞いてあげていたら、いくらかは覚えちゃった。だけど本当はそんなのどうでもいいのよね。抱き合ってる方がずっと楽しいもの」
本文から引用
杏子ちゃんがポリコレについての考えを彰二に語る場面の一節です。
ポリコレとは、正式名称をポリティカル・コレクトネスといいます。
人種や性別などに対して、差別的な表現を避け、不利益や不快感を与えないようにする意図を持った表現を指します。
近年では、ディズニーのポリコレへの配慮のについて話題になったこともあり、耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。
杏子に問い詰められあたふたする彰二。
そんな彰二に杏子は得意げに種明かしをするのです。
ただそれは元カレの影響だけではないはずです。
杏子自身も自分の頭で考え、芯を持っている女の子であり、高校生だった甘味は少し大人な杏子ちゃんに憧れの気持ちを持っていました。
「努力できるのは偉いことなのかしら?」
「そりゃ偉いだろ。だって、できない人の方が多いわけださしさ」
「努力が痛々しく感じられても?」
すぐ言葉が出てこなかった。
「背伸びしすぎて倒れそうになってても?」
もしかして僕のことだろうか。
本文より引用
彰二にとって、お兄ちゃんは「完璧な兄」でした。
背中を追うべき正解を進んでいた人。
お兄ちゃんについて杏子に語るシーンです。
彰二の話を聞いて、杏子はふとそんな言葉を投げかけます。
努力できることは偉いこと?
努力にしがみついてきた彰二には刺さる一言だったのではないでしょうか。
そのあと、彰二は自分の影に触れてみます。
影には触ることができません。
杏子も影に触ってみますが、なぜか彰二には杏子はきちんと自分の影に触れていたように感じたのでした。
自分を持つ。
自分のためと思っていても、実際は周りの影響を受け、周りから見た自分を守るために頑張り続けている人は多いと思います。
自分の影にちゃんと触れることはできますか?
この本を読み終わって
目の前の目標だった兄が突然目の前からいなくなってしまった。
彰二にとっては、兄弟としての兄をなくしてしまっただけでなく、ゴールそのものをなくしてしまい、道に迷ってしまいます。
プロローグの道に迷ってしまった場面が、そのことを暗示しているかのようです。
最後はまさかのどんでん返し!
兄のことを少し理解できるようになり、兄と違う一歩を踏み出すことができたのは、
7日間の旅での経験のおかげで、あれほど遠かった兄に近づいたからだと感じました。
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